Webサイトを企画する際、マーケティング調査は欠かせません。
調査結果を資料化することで、チームやクライアントとの認識が揃い、「なぜこの構成なのか」「なぜこの導線なのか」を根拠をもって説明できるようになります。
そこで本記事では、Web制作の現場で企画前に実際に行っている調査項目を7つに整理しました。
この記事でわかること
- サイトの企画前に実施すべき7つのマーケティング調査と目的
- 実務で使えるマーケティング調査の進め方
- マーケティング調査が必要な4つの理由
サイト企画や提案前に行うマーケティング調査7選
以下の表では、Webサイトの企画や提案前に行う調査項目を一覧化し、目的と出力形式をご紹介しています。
調査項目 | 目的 | 出力形式 |
---|---|---|
競合調査 | サービスの機能・感性・導線・収益モデルを比較 | 競合比較表・ポジショニングマップ |
ヒューリスティック分析 | 競合サイトのUI/UXを評価し、改善点を抽出 | 評価シート(10原則ベース)+スクリーンショット |
SWOT分析 | 自社や新サイトの強み・弱み・機会・脅威を整理 | 4象限マトリクス |
ペルソナ設計 | 想定ユーザー像を明確化し、導線設計に活かす | ペルソナシート(イメージ写真・属性・ニーズ) |
カスタマージャーニー | ユーザーがサービスを知り、利用・満足するまでの流れ | ジャーニーマップ(フェーズ×感情) |
SEOキーワード調査 | 検索流入を狙うためのキーワード設計 | キーワード一覧+検索ボリューム+競合性 |
ポジショニングマップ | 感性軸×機能軸などで競合との差別化を可視化 | 2軸マップ(例:操作性×信頼性) |
これらの調査項目は、Webサイトの企画段階で“何をどう設計すべきか”を明確にするための指針となります。単なる情報収集ではなく、ユーザー視点・競合状況・集客戦略を統合的に整理するための実務的なフレームワークです。まずは自社やプロジェクトの状況に合わせて、必要な調査から着手してみましょう。
次のセクションでは、実務でよく使われる進め方のステップをご紹介します。
進め方のおすすめステップ
ここまでで、サイト企画前に行うべき調査項目を整理しました。
では、実際にどの順番で進めていけばよいのでしょうか?以下で、実務でよく使われる進行ステップや目的別で使える調査の組み合わせをご紹介します。
リニューアルや新規制作時に必要なマーケティング調査5ステップ
以下の一連の調査を資料化すれば、顧客への提案資料としても非常に説得力があり、サイト制作の方向性もブレません。
- 競合調査(機能・感性・導線・収益)
まずは外部環境を把握し、差別化の方向性を探る - ヒューリスティック分析(UI/UXの差分を明確化)
競合や現行サイトのUI/UXを評価し、改善点を抽出 - SWOT分析(自社やサービスの立ち位置と戦略を整理)
自社の立ち位置と戦略を整理し、方向性を定める - ペルソナ&カスタマージャーニー(ユーザー理解を深める)
ユーザー理解を深め、導線設計やコンテンツ設計に活かす - SEOキーワード&ポジショニングマップ(集客と検索戦略を設計)
集客と差別化を設計し、検索戦略を構築
目的別/調査の組み合わせ
調査は、目的に合わせて7つの調査を組み合わせて使うことで、精度が最大化されます。以下のように「戦略」「体験」「集客」の3領域に目的を分けて、最適な組み合わせを選ぶとよいでしょう。
- 戦略設計の精度を高めたい場合 → SWOT分析 + 競合調査
- ユーザー体験の精度を高めたい場合 → ペルソナ設計 + カスタマージャニー + ヒューリスティック分析
- 集客・検索流入の精度を高めたい場合 → SEOキーワード + ポジショニングマップ
実案件で調査を進めるメリット
Webサイト企画におけるマーケティング調査は、机上で完結するものではありません。
実際のプロジェクトで調査を進めることで、理論だけでは見えなかった“現場のリアル”が浮かび上がってきます。
実際の競合調査から得た気づき
あるサービスの企画では、ペルソナ設計によって来場者像が明確になり、カスタマージャーニーを通じて「どこで知り」「どう予約して」「何に満足するのか」が具体化されました。
さらに、SWOT分析やポジショニングマップで競合との差別化ポイントを整理し、SEOキーワード調査によって「検索される言葉」が明確になれば、集客戦略にも直結します。
調査から得られる具体的なインサイト
マーケティング調査の本来の目的は、単なる情報収集ではなく、ユーザーの深層心理や行動の背景にある“インサイト”を得ることです。このインサイトこそが、サイト設計やコンテンツ制作において、他社との差別化や成果を生み出すために重要です。
実務で調査を進めることで、以下のような具体的なインサイトが得られます。
- ユーザーに刺さる言葉や写真の方向性
- 競合が見落としているニーズ
- 顧客が求めている体験価値
- サイト設計に必要なコンテンツの粒度
これらのインサイトは、ユーザーの行動や心理に沿ったWeb体験を設計するための出発点となります。
単なる情報収集ではなく、戦略設計の土台としてマーケティング調査を機能させることで、ユーザーに届くサイト、クライアントに納得される提案、そして成果につながるWebサイト制作へとつながっていきます。
<インサイトとは>
インサイトとは、ユーザー自身も気づいていない“本音”や“行動の裏にある理由”を見抜く気づきのことです。表面的なニーズやデータだけでは見えない、深層心理や価値観を見抜くことでよりユーザーに刺さる企画やコンテンツが生まれます。
まずは競合分析から!マーケティング調査の進め方
前の章までで、Webサイトの企画前に行うべきマーケティング調査の全体像を整理しました。まず最初に行う「競合分析」の詳しい進め方については、以下をご覧ください。
Webマーケティング視点で解説!競合サイト調査の基本と進め方
実務でマーケティング調査が必要とされる4つの理由
Webサイトを企画する際、マーケティング調査は単なる準備作業ではなく、戦略設計の土台です。
ここでは、実務の現場で調査が求められる理由を4つの観点から整理します。
サイトの目的とターゲットを明確にするため
企画段階で「誰に向けて、何を届けるか」が曖昧なまま進めてしまうと、デザインや導線がブレてしまい、成果につながりにくくなります。
そんな時、ペルソナ設計やカスタマージャーニーを活用することで、ユーザーの視点に立った設計が可能になり、サイト全体の一貫性が高まります。
競合との差別化ポイントを見つけるため
競合調査やポジショニングマップを通じて、自社サービスの強みや独自性を客観的に把握することができます。これにより、“選ばれる理由”を明確にし、サイトに反映することが可能になります。
成果につながるサイト設計のため
SEOキーワード調査を行えば、検索ニーズに合ったコンテンツ設計ができ、自然検索からの流入を狙うことができます。また、SWOT分析を活用することで、戦略的な方向性を定めたサイト設計が可能になります。
提案資料や社内承認の説得力を高めるため
マーケティング調査の結果を資料化することで、クライアントや社内関係者への説明が論理的かつ納得感のあるものになります。「なんとなくこうしたい」ではなく、根拠に基づいた企画提案ができるため、承認率も高まります。
Webサイト制作において、マーケティング調査は単なる事前準備ではなく、戦略と成果を左右する重要なプロセスです。ユーザー理解・競合分析・集客設計・社内説得、これらすべてを支えるのが調査によって得られる根拠と洞察です。
調査を丁寧に行うことで、“なんとなく”ではなく、“なぜこの設計なのか”を説明できるサイト企画が実現します。結果として、ユーザーに届くサイト、クライアントに納得される提案、そして成果につながるWebサイト制作へとつながっていきます。
マーケティング調査でよくある質問
マーケティング調査を進める中で、よくいただく質問をまとめました。
SWOT分析はいつ使うべきですか?
Webサイトやサービスの立ち位置や戦略を整理したい場合に使います。特に競合が多い市場では、自社の強みや差別化ポイントを明確にするために有効です。
ペルソナ設計はなぜ重要なのですか?
ペルソナを設計することで、ユーザーのニーズや行動パターンが明確になり、サイトの導線やコンテンツ設計がブレなくなります。
ヒューリスティック分析って専門知識が必要ですか?
基本的なUI/UXの原則(Jakob Nielsenの10原則)を理解していれば、誰でも実施できます。スクリーンショットとチェックリストを使えば、簡易評価も可能です。
※Jakob Nielsen(ヤコブ・ニールセン):主にWebサイトのユーザビリティ研究の第一人者。
SEOキーワード調査は必要ですか?
はい、必須です。検索されやすいキーワードを把握することで、集客力が大きく変わります。
ポジショニングマップはどう作ればいいですか?
競合サービスを「操作性×信頼性」や「コスト×サポート体制」などの2軸で整理することで、差別化ポイントが明確になります。たとえば「直感的な使いやすさ」と「情報の信頼性」を軸に競合サービスを整理することで、自社の立ち位置や差別化ポイントが明確になります。
マーケティング調査のまとめ
サイト制作は戦略設計から始まります。まずはマーケティング調査を丁寧に行い、ユーザー視点と競合分析をもとに、差別化されたサイトを構築しましょう!